公開日: 2025年6月4日

高円寺は阿波おどりだけじゃない!地元民が愛する庚申通り商店街の昭和レトロ探訪

高円寺は阿波おどりだけじゃない!地元民が愛する庚申通り商店街の昭和レトロ探訪

高円寺と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?夏の熱気あふれる阿波おどり、個性的な古着屋さん、ライブハウスが点在するサブカルチャーの街、といったイメージを持つ方が多いかもしれません。確かにそれらは高円寺の大きな魅力の一部です。

しかし、高円寺の魅力はそれだけにとどまりません。駅周辺には大小さまざまな商店街が広がり、それぞれが独自の雰囲気を持っています。その中でも、地元の人々に深く愛され、どこか懐かしい昭和の面影を残す「高円寺庚申通り商店街」に今回は焦点を当ててみたいと思います。

阿波おどりの熱狂とは一味違う、日常に息づく高円寺の魅力。特に、この商店街に点在する「昭和レトロ」な風景や、地元密着型の温かい雰囲気、そして多様な店舗が織りなす活気について、深掘りしてご紹介します。

庚申通り商店街ってどんなところ?

JR高円寺駅の北口を出て、ロータリーを左手に見ながら進むと、すぐに「高円寺純情商店街」のアーチが見えてきます。庚申通り商店街は、その純情商店街から西側に並行して伸びる商店街です。駅からは徒歩数分とアクセスも良好。

純情商店街が駅前からヘアピンカーブを描くように広がっているのに対し、庚申通り商店街は早稲田通りまでほぼ一直線に北へ伸びています。全長は約400メートル。この通りには、昔ながらの個人商店から、新しいカフェや飲食店、雑貨店まで、約100店舗以上が軒を連ねています。

商店街の名前にもなっている通り、通りのほぼ中央には「庚申塚」がひっそりと残されています。これは、庚申信仰に基づいて建てられた石塔で、商店街の長い歴史を物語っています。この庚申塚にちなんで、商店街のマスコットキャラクターは可愛らしいお猿さんの「モンピー」なんですよ。

純情商店街と比べると、やや落ち着いた雰囲気もありますが、それでも平日休日問わず多くの人で賑わっており、地元住民の生活を支える大切な場所となっています。活気がありながらも、どこかホッとできる、そんな温かい空気が流れているのが庚申通り商店街の魅力です。

タイムスリップ気分?庚申通りに息づく「昭和レトロ」

高円寺の街全体には、開発が進んだ都心部では失われつつある昭和の面影が色濃く残っています。特に商店街を歩いていると、その雰囲気を強く感じることができます。庚申通り商店街も例外ではありません。ここでは、庚申通りで見られる代表的な「昭和レトロ」の要素、特に「看板建築」と「レトロ喫茶」に注目してみましょう。

看板建築の宝庫、高円寺

高円寺は、実は「看板建築」の宝庫としても知られています。看板建築とは、関東大震災後の復興期である昭和初期に東京を中心に建てられた商店建築のスタイルです。それまでの日本の商店は、間口が狭く奥行きが深い「町家」が主流でしたが、震災後の区画整理で建物を道に張り出して建てることが制限されたため、建物の正面を垂直に立ち上げ、まるで大きな「看板」のように見せるデザインが考案されました。

この看板建築は、西洋建築の要素を取り入れつつ、日本の商店建築に合わせて独自に発展しました。正面部分にタイルや銅板、モルタルなどで装飾を施し、個性的なデザインの建物が多く生まれました。戦後にも看板建築は建てられましたが、戦前のものに比べて装飾が少なく、よりシンプルで合理的なデザインが特徴です。戦前のものは母屋が「平入り」(妻側が道に面している)、戦後のものは「妻入り」(平側が道に面している)が多いという見分け方もあります。

高円寺の商店街には、この戦前・戦後の様々なタイプの看板建築が混在しており、その多様さから「看板建築の見本市」とも呼ばれています。そして、庚申通り商店街にも、魅力的な看板建築がいくつか現存しています。

特に目を引くのが、「稲毛屋金物店」の建物です。建物の周囲を枠状に囲むようにタイルが貼られ、2階の正面はモルタル仕上げ。中央のシンプルな窓枠もタイルで装飾されています。枠に貼られているのは、昭和初期に流行したスクラッチタイル。建物全体のデザインや、奥の母屋が妻入りであることから、おそらく戦後すぐに建てられた看板建築と考えられます。このような、個性的でありながらも生活に溶け込んでいる看板建築を見つけるのも、庚申通り散策の楽しみの一つです。

高円寺庚申通り商店街の看板建築
画像引用元: urbanlife.tokyo

高円寺の看板建築は、単に古い建物として残っているだけでなく、今も現役の商店として使われています。活気ある商店街の中で「生きた」看板建築を見られるのは、高円寺ならではの貴重な体験と言えるでしょう。ルック商店街に残る銅板葺きの三軒長屋や、エトアール通りの国際様式を取り入れた建物など、他の商店街にも個性的な看板建築が点在しており、高円寺全体が建築好きにとっても魅力的な街なのです。

懐かしのレトロ喫茶で一息

高円寺はカフェが多い街としても知られていますが、おしゃれな今どきカフェだけでなく、昔ながらのレトロ喫茶・純喫茶も数多く残っています。庚申通り商店街にも、そんな魅力的なレトロ喫茶があります。

庚申塚を右に曲がってすぐの場所にある「喫茶コーラル」は、カウンター席がメインの落ち着いた雰囲気の喫茶店です。店内に流れるラジオの音や、常連さんらしきお客さんと店員さんのやり取りを聞いていると、まるで時間がゆっくり流れているかのような感覚になります。オープンから15時まではお得なセットメニューがあり、ハムトーストやチーズトーストとドリンクを楽しめます。終日提供しているホットケーキとドリンクのセットも人気で、高円寺散策の途中でちょっと休憩するのにぴったりです。

庚申通りから少し外れた場所や、他の商店街にも個性豊かなレトロ喫茶が点在しています。例えば、ルック商店街にある「珈琲亭 七つ森」は、創業1978年の老舗で、ステンドグラスの照明や金魚鉢などレトロな雑貨に囲まれた空間で、名物の「オムごはん」や自家製カスタードプリンを味わえます。南口の「ぽえむ」は、土佐和紙フィルターで淹れるこだわりのコーヒーが自慢。南口の「名曲 ネルケン」は、クラシック音楽が大音量で流れる独特の耽美な世界観が魅力です。

これらのレトロ喫茶は、単にコーヒーを飲む場所としてだけでなく、読書をしたり、友人と語り合ったり、一人で物思いにふけったりと、様々な過ごし方ができる都会のオアシスのような存在です。庚申通りを歩き疲れたら、お気に入りのレトロ喫茶を見つけて立ち寄ってみるのも良いでしょう。

高円寺のレトロ喫茶
画像引用元: tokyoexplorersmap.blogspot.com

地元民の台所であり、若者も集う多様な商店街

庚申通り商店街のもう一つの大きな魅力は、その多様性です。この商店街は、昔から地元住民の生活を支えてきた「台所」としての機能と、高円寺らしい新しい文化や若者の感性を取り入れた店舗が共存しています。

通りを歩いていると、まず目につくのは、精肉店の「肉のジャンプ」や「とり肉豊島屋」、魚屋の「魚浩本店」、金物店の「稲毛屋金物店」、青果店、クリーニング店、薬局など、地域に根差した昔ながらのお店です。これらの商店は、長年この街で商売を続け、地元の人々との間に強い信頼関係を築いています。店先で店員さんとお客さんが楽しそうに会話している光景は、都会では珍しくなった温かい人情を感じさせます。

一方で、庚申通りには新しい風も吹き込んでいます。人気のクレープ店「ハニービークレープ」のような食べ歩きグルメのお店、個性的なカフェ、ラーメン店「麺屋はやしまる」や「ラーメンせい家」、カレー店「ホールスパイスカレー青藍」、ドーナツ店の「フロレスタ」など、若者や観光客にも人気の飲食店が点在しています。古着屋や雑貨店、美容室なども多く、様々なニーズに応える多様な店舗構成となっています。

この新旧が混ざり合い、生活必需品から趣味嗜好品、グルメまで何でも揃う点が、庚申通り商店街が地元民だけでなく、高円寺を訪れる多くの人々を惹きつける理由です。活気がありながらも、どこか懐かしく、そして新しい発見がある。そんな魅力が詰まった商店街なのです。

食べ歩きも楽しい!庚申通りのグルメスポット

庚申通り商店街は、食べ歩きやお食事を楽しむのにもぴったりの場所です。通りを歩いていると、美味しそうな香りが漂ってきたり、気になるお店が次々と現れたりします。

手軽に楽しめる食べ歩きグルメとしては、「孫ちゃん上海焼小龍包」の熱々の小龍包や、「ハニービークレープ」のクレープなどが人気です。小腹が空いたときに立ち寄るのに最適です。

しっかり食事をしたいときには、ラーメン店やうどん店、カレー店、焼肉店など、様々なジャンルのお店があります。コンテキストにもあった「スパ吉」は、行列ができる人気のパスタ店です。また、「肉問屋直営 焼肉 肉一」のようなお店で、美味しいお肉を味わうのも良いでしょう。昔ながらの定食屋さんや中華料理店もあり、選択肢は豊富です。

カフェや喫茶店も多いので、歩き疲れたら美味しいコーヒーやスイーツで休憩することもできます。「フロレスタ」のようなドーナツ店も、ちょっとしたおやつにぴったりです。

庚申通り商店街は、まさに食の宝庫。地元の人々が日常的に利用するお店から、遠方から訪れる人もいる人気店まで、様々なグルメが集まっています。食べ歩きをしながら、お気に入りのお店を探してみるのも楽しいでしょう。

高円寺庚申通り商店街の食べ歩きグルメ
画像引用元: katteni-kouenji.com

商店街のイベントと活気

庚申通り商店街は、年間を通して様々なイベントを開催しており、それが商店街の活気にも繋がっています。例えば、毎年春に高円寺全体で開催される「高円寺びっくり大道芸」では、庚申通りも会場の一つとなり、多くの大道芸人がパフォーマンスを披露し、街がお祭りムードに包まれます。また、年末には「歳末スクラッチ」のようなキャンペーンも実施され、買い物を楽しむきっかけを提供しています。

これらのイベントは、商店街に多くの人々を呼び込み、お店と地域住民、そして訪れる人々との交流を生み出しています。阿波おどりの時期はもちろんですが、それ以外の時期にも様々なイベントが開催されていることを知っておくと、高円寺を訪れる楽しみがさらに増えるでしょう。

庚申通り周辺の暮らし

庚申通り商店街は、単なる商業エリアとしてだけでなく、その周辺には地元住民の暮らしを支える施設や憩いの場も点在しています。商店街から少し路地に入ると、静かな住宅街が広がっており、都心へのアクセスが良いにも関わらず、落ち着いた住環境が魅力です。

特に有名なのが、商店街からすぐの場所にある銭湯「小杉湯」です。昭和8年創業の歴史ある銭湯で、地元の人々はもちろん、遠方から訪れるファンも多い人気のスポットです。小杉湯の隣には、コミュニティスペース「小杉湯となり」もあり、銭湯を中心とした地域コミュニティが形成されています。商店街での買い物の後に銭湯で汗を流す、といった高円寺らしい過ごし方もおすすめです。

また、商店街の近くには高円寺北公園のような公園もあり、子供たちの遊び場や住民の散策の場となっています。このように、庚申通り商店街は、買い物や食事だけでなく、日々の暮らしに必要なものが揃い、リラックスできる場所も近くにある、住みやすさにも繋がる環境が整っています。

まとめ:阿波おどりだけじゃない、日常の高円寺を庚申通りで満喫しよう

高円寺庚申通り商店街は、夏の阿波おどりやサブカルチャーといった高円寺の一般的なイメージとは一味違う、地元に根差した日常の魅力が詰まった場所です。

歴史を感じさせる庚申塚や、個性豊かな看板建築、懐かしい雰囲気のレトロ喫茶など、「昭和レトロ」な風景が今も息づいています。そして、昔ながらの商店と新しいお店が共存する多様性、美味しいグルメ、年間を通して開催されるイベントなど、訪れる人々を楽しませる要素が満載です。

阿波おどりの熱狂も素晴らしいですが、ぜひ一度、普段着の高円寺の魅力に触れるために、庚申通り商店街をゆっくりと散策してみてください。食べ歩きをしたり、レトロ喫茶で休憩したり、お気に入りの看板建築を見つけたり。きっと、あなただけのお気に入りの場所やお店が見つかるはずです。

高円寺の奥深い魅力を発見する旅は、庚申通り商店街から始まるかもしれません。