公開日: 2025年6月4日

九谷焼の新しい波!石川金沢の若手作家が伝統をアップデートしオンラインで届ける

九谷焼の新しい波!石川金沢の若手作家が伝統をアップデートしオンラインで届ける

石川県が誇る伝統工芸品、九谷焼。その魅力は何と言っても、鮮やかで大胆な「色絵」にあります。赤、青、黄、紫、紺青の「九谷五彩」を中心に描かれる絵付けは、見る人の心を惹きつけ、食卓や空間を華やかに彩ります。

長い歴史の中で培われてきた伝統的な技法や画風は多岐にわたり、窯元や作家によってその表現は様々です。古九谷の力強さ、吉田屋の深み、庄三風の絢爛さなど、時代ごとの特徴も九谷焼の奥深さを物語っています。

そして今、九谷焼の世界には新しい波が押し寄せています。それは、伝統を大切に受け継ぎながらも、現代的な感性で自由な発想を取り入れた作品を生み出す若手作家たちの活躍です。彼らの手から生まれる九谷焼は、従来のイメージを覆すようなモダンでおしゃれなデザインが多く、私たちの日常にすっと溶け込み、彩りを添えてくれます。

さらに、インターネットの普及により、石川県や金沢の工房から生まれたこれらの新しい九谷焼が、オンラインショップを通じて全国、そして世界へと届けられるようになりました。自宅にいながら、個性豊かな作家たちの作品をじっくりと選び、購入できるようになったことは、九谷焼ファンにとって大きな喜びと言えるでしょう。

この記事では、九谷焼の基本的な魅力に触れつつ、伝統をアップデートし、モダンでおしゃれな作品を生み出している注目の若手・人気作家さんたちをご紹介します。また、オンラインで九谷焼を探し、暮らしに取り入れるヒントもお伝えします。ぜひ、あなただけのお気に入りの九谷焼を見つける旅に出かけましょう。

九谷焼の歴史と現代に息づく魅力

九谷焼の歴史は、江戸時代初期、1655年頃に現在の石川県加賀市にあたる久谷村で良質な陶石が発見されたことに始まります。加賀藩主・前田利常の命により窯が開かれ、独特の色絵磁器が誕生しました。これが「古九谷」と呼ばれるものです。古九谷は、大胆な構図と力強い筆致、そして緑や黄を多用した深みのある色彩が特徴で、わずか50年ほどで廃窯となったため「幻の古九谷」とも称され、現在でも美術品として高く評価されています。

約100年の時を経て、九谷焼は再び息を吹き返します。加賀藩が京都から陶工を招き、金沢に春日山窯を開いたことを皮切りに、吉田屋窯、小野窯などが次々と開かれ、様々な画風が確立されました。この時期の九谷焼は「再興九谷」と呼ばれ、古九谷とはまた異なる魅力を持っています。特に吉田屋窯は古九谷の様式を継承しつつ、緑、黄、紫、紺青の四彩を用いた重厚な作風が特徴です。

明治時代には、小野窯の九谷庄三による「彩色金襴手」が人気を博し、「ジャパンクタニ」として海外にも広く知られるようになりました。赤を基調に金彩を豪華に施すこの技法は、絢爛豪華な九谷焼のイメージを確立しました。

1975年には国の伝統工芸品に認定され、現在に至るまで、九谷焼は日本の代表的な色絵磁器として、多くの作り手によって受け継がれ、進化し続けています。伝統的な技法や画風を守る一方で、現代のライフスタイルや感性を取り入れた新しい表現が次々と生まれており、その多様性こそが現代九谷焼の大きな魅力と言えるでしょう。

鮮やかな九谷焼の器
画像引用元: iijikanazawa.com

伝統を継承し、新しい風を吹き込む注目の作家たち

現代の九谷焼作家たちは、長い歴史の中で培われた技術や様式を深く理解しつつ、そこに自身の個性や現代的な感覚を融合させています。その作品は、伝統的な美しさとモダンなデザインが見事に調和しており、私たちの暮らしをより豊かに彩ってくれます。ここでは、特にモダンでおしゃれな作風で注目されている作家さんたちをピックアップしてご紹介します。

武田 朋己(たけだ ともみ)さん

金沢市内に工房を構える武田朋己さんは、「明るく元気な食卓を応援」をコンセプトに、暮らしに寄り添う器を制作されています。九谷焼の伝統技法をベースにしながらも、ポップでアートな感性が光る作品が特徴です。「日常を豊かにするのはほんの少しの工夫と想像力」という言葉の通り、武田さんの器は毎日の食卓に活力を与えてくれます。

代表作の一つである「宇宙皿」は、その名の通り宇宙を思わせるような、遊び心あふれるデザインが印象的です。食卓にあるだけでパッと明るく楽しい雰囲気になり、オードブルやサラダ、大皿料理など、様々な用途で活躍します。見た目の楽しさだけでなく、九谷焼としての質の高さも兼ね備えたプレートです。

小高 裕子(おだか ゆうこ)さん

九谷焼絵付工房「色絵 遊(いろえ ゆう)」を主宰する小高裕子さんは、九谷五彩の伝統を守りつつも、中間色を取り入れた癒しのある色味が魅力です。「美味しいは器から」をコンセプトに、優しい感性と楽しい発想で描かれる絵付けは、食卓を美しく彩ります。

ユニークな作品としては「ハブラシスタンド ペルシャ」があります。九谷焼の美しさを日常の身近なアイテムで感じられるように、という発想から生まれました。シンプルなフォルムに施された異国情緒漂う絵付けが、洗面所に華やかさを添えます。歯ブラシスタンドとしてだけでなく、ペン立てや小物入れとしても使える便利なアイテムです。

稲積 佳谷(いなづみ よしたに)さん

金沢の山間にある「うつつ窯」で制作を行う稲積佳谷さんは、成形から絵付けまで全て手作業で、一つひとつ丁寧に作品を生み出しています。赤土の上に白い磁器土を重ねて焼き上げる技法を用い、幻想的で独特の世界観を持つ上絵付けが最大の魅力です。実用的ながらも、まるで物語の一場面のような絵柄が、日々の暮らしに彩りを添えてくれます。

「伝説の怪獣 マグカップ」は、繊細なタッチで描かれた花や幻獣が可愛らしく、お伽話のような雰囲気です。11種類もの絵具が使われた多彩な色味と、内側に施されたオパールラスターのキラキラとした輝きが特別感を演出します。自分だけの特別なマイカップとして、使うたびに心が満たされる逸品です。

有生 礼子(ゆうき れいこ)さん

九谷焼を代表する技法の一つ「赤絵細描(あかえさいびょう)」の絵付け師である有生礼子さん。赤絵細描の第一人者である父、福島武山氏に師事し、その高度な技術を受け継いでいます。有生さんの作品は、髪の毛よりも細い線で描かれる緻密な文様の上品さに加え、女性らしい優しさと和やかさが感じられるのが魅力です。多くの赤絵ファンを魅了し続けています。

「カップ&ソーサー 唐草文」は、有生さんの繊細かつ丁寧な筆使いによる赤絵細描を存分に堪能できる作品です。緻密でありながらもどこか可愛らしさのある美しさが特徴で、ところどころに施された金彩が上品な高級感を添えています。特別なティータイムを演出してくれる逸品です。

望月 千緒(もちづき ちお)さん

花坂陶石を原料とした磁器土を用い、九谷の絵付け技法でややぷっくりと立体的に盛り上がった上絵を描くのが望月千緒さんの特徴です。シリーズごとに金彩を組み合わせたり、釉薬で色彩の変化を加えたりと、様々な表現を追求されています。日常使いしやすい器でありながら、九谷焼らしい華やかな雰囲気も感じてほしい、という想いを込めて制作されています。

「花文尽くし」シリーズの5寸皿は、釉薬を巧みに使い、質感や色のトーンをコントロールして表現されています。あたたかみのあるイエローのプレートに、可愛らしい花やハートが描かれたデザインは、銘々皿としてはもちろん、デザート皿としても食卓を明るくしてくれます。

仲田 錦玉(なかだ きんぎょく)さん

明治時代から伝わる九谷焼伝統技法「青粒(あおちぶ)」の最高技術保持者であり、「盛金青粒技法」の第一人者でもある3代 仲田錦玉さん。その青粒は、とりわけ小さく、等間隔に渦状や青海波文様状に並ぶ様子はまさに神業と称されます。盛金の技法も加わることで生まれる立体感と風格は他を圧倒し、皇室や政府からの支持も厚い、九谷焼を代表する作家の一人です。

「九谷焼 平盃 渦打白粒盛金宝相華唐草」は、3代錦玉さんの高度な「白粒(しろちぶ)」と「盛金」の技術を堪能できる逸品です。白とゴールドの色彩が優雅さと品格を際立たせ、格別な美しさを放っています。伝統技法の最高峰でありながら、その洗練されたデザインはモダンな空間にも不思議と馴染みます。大切な方への特別なギフトとしても最適です。

高原 真由美(たかはら まゆみ)さん

京都出身で、石川県の「九谷青窯(くたにせいよう)」で制作を続ける高原真由美さん。食材を盛り付けたときに最も美しく映えることを意識して作られる器は、どれも可愛らしさと上品さを兼ね備え、日常で非常に使いやすいのが特徴です。

「ゴス鉄渕花尽くし楕円皿」は、深みのある藍色とくすんだ水色、青の濃淡で描かれた花々がリム部分を彩る、センスの良いデザインが魅力です。落ち着いた色合いながらも華やかさがあり、和食・洋食問わず様々な料理に合わせやすいオーバルプレートです。丈夫で日常使いしやすい点も嬉しいポイントです。

伊藤 由紀子(いとう ゆきこ)さん

石川県九谷焼技術研修所で学んだ後、人間国宝・吉田美統氏の「錦山窯(きんざんがま)」で修行を積んだ伊藤由紀子さん。現在は横浜で作陶されています。古くからの伝統的な絵付けに、異文化のモダンなテイストを掛け合わせた独自の作風が魅力です。

「金彩花七宝 台皿付盃 桃色」は、婦人画報でも紹介された人気シリーズの作品です。モダンなデザインと味わい深い桃色が印象的で、上から見ると可愛らしい花のような形状をしています。本金を使って細部まで丁寧に描かれた、特別な時間を彩るにふさわしい逸品です。

モダンな九谷焼の作品例
画像引用元: iijikanazawa.com

その他の注目作家・窯元

上記でご紹介した作家さん以外にも、九谷焼の世界には魅力的な作り手がたくさんいます。例えば、「色絵九谷 遊」の小高裕子さん以外にも、同工房からは様々なモダンな作品が生み出されています。また、「九谷青窯」には高原真由美さん以外にも多くの作家さんが所属しており、それぞれが個性を発揮した使いやすい器を制作しています。

「陶らいふ」や「九谷極彩」といったオンラインショップでは、櫻井千絵さん、相川志保さん、村田菜穂美さん、河村澄香さん、川合孝知さん、岡田絹代さんなど、様々な作家さんや窯元の作品を見つけることができます。伝統的な絵柄から、動物や植物をモチーフにした可愛らしいもの、抽象的なデザイン、キャラクターとのコラボレーション(「九谷焼 いわたや」など)まで、そのバリエーションは驚くほど豊富です。

若手作家たちは、伝統的な技法や素材(花坂陶石など)を理解しつつ、現代のライフスタイルに合わせた形やデザイン、色使いを積極的に取り入れています。彼らの作品は、単なる伝統工芸品としてだけでなく、アート作品として、そして何よりも日々の暮らしを豊かにする「器」として、多くの人々に愛されています。

オンラインで広がる九谷焼の世界

かつては産地や限られた店舗でしか手に入らなかった九谷焼ですが、今はオンラインショップを通じて、全国どこからでも気軽に購入できるようになりました。これは、九谷焼の新しい波を牽引する若手作家たちの作品に触れる上で、非常に大きな変化です。

オンラインショップの最大のメリットは、その品揃えの豊富さです。様々な作家さんや窯元の作品を一度に見比べることができ、自分の好みや用途にぴったりの一点を見つけやすくなりました。また、店舗に足を運ぶ時間がない方でも、自宅でじっくりと時間をかけて選べるのも魅力です。

コンテキストで参照した「陶らいふ」や「九谷極彩」、「九谷焼 いわたや」といったオンラインショップは、それぞれに特色があり、幅広いラインナップを取り揃えています。作家ごとに作品を探したり、アイテムの種類(お皿、マグカップ、湯呑、酒器など)で絞り込んだり、価格帯で検索したりと、様々な方法で目的の作品にたどり着くことができます。

オンラインで購入する際には、いくつか注意しておきたい点もあります。まず、画面上で見る色味と実際の作品の色味には、多少の違いが生じる可能性があることを理解しておきましょう。また、器のサイズ感も写真だけでは分かりにくい場合があります。商品説明に記載されているサイズ(直径、高さ、容量など)をしっかりと確認し、必要であれば手持ちの器と比較してみることをお勧めします。

ギフトとして九谷焼を贈りたい場合も、オンラインショップは非常に便利です。「陶らいふ」や「九谷焼 いわたや」のように、ギフト包装や熨斗、メッセージカードの対応を行っているショップも多くあります。贈る相手の好みやライフスタイルを想像しながら、じっくりと器を選ぶ時間は、贈る側にとっても楽しいひとときとなるでしょう。

オンラインショップのイメージまたはギフト梱包
画像引用元: kids-nurie.com

モダン九谷焼を暮らしに取り入れるヒント

モダンなデザインの九谷焼は、私たちの日常の様々なシーンで活躍してくれます。鮮やかな絵付けの器は、いつもの料理をより一層美味しく、華やかに見せてくれます。例えば、シンプルなパスタやサラダも、九谷焼のプレートに盛り付けるだけで、まるでカフェのようなおしゃれな一皿に変わります。

和食はもちろんのこと、意外と洋食や中華とも相性が良いのが現代九谷焼の特徴です。伝統的な絵柄の湯呑でコーヒーを飲んだり、モダンな小皿をアクセサリートレイとして使ったりと、自由な発想で暮らしに取り入れてみましょう。

また、九谷焼は飾って楽しむこともできます。お気に入りの一点を棚や玄関に飾るだけで、空間がぐっと華やぎます。季節の花を生ける花器として使ったり、お気に入りの小物を置く台として使ったりするのも素敵です。

手入れについては、日常使いのものであれば、他の食器と同様に中性洗剤で洗うことができます。金彩や上絵付けが施されているものは、食洗機の使用を避け、柔らかいスポンジで優しく手洗いすることをお勧めします。大切に扱うことで、長くその美しさを保つことができます。

まとめ

石川県が誇る九谷焼は、長い歴史の中で培われた伝統的な美しさと、現代の感性を取り入れた新しい表現が融合し、今まさに新しい波を迎えています。特に若手作家たちの活躍は目覚ましく、彼らの手から生まれるモダンでおしゃれな作品は、私たちの日常に彩りと豊かさをもたらしてくれます。

九谷五彩の鮮やかな色使い、緻密な絵付け、そして作家それぞれの個性的なデザイン。九谷焼には、知れば知るほど引き込まれる奥深さがあります。そして、オンラインショップの充実により、これらの魅力的な作品がより身近な存在となりました。

この記事でご紹介した作家さんたちは、ほんの一例です。九谷焼の世界には、まだまだたくさんの才能あふれる作り手がいます。ぜひ、オンラインショップなどを活用して、様々な九谷焼の作品に触れてみてください。きっと、あなたの心を捉える、特別な一点が見つかるはずです。

お気に入りの九谷焼の器を使って、日々の暮らしをより鮮やかに、より豊かなものにしましょう。伝統と革新が織りなす九谷焼の世界を、心ゆくまでお楽しみください。