公開日: 2025年6月4日

瀬戸内国際芸術祭を楽しむ!直島・豊島の見どころとフェリー島旅の計画術

瀬戸内国際芸術祭を楽しむ!直島・豊島の見どころとフェリー島旅の計画術

瀬戸内海に点在する美しい島々を舞台に、3年に一度開催される現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」。国内外から多くの人々が訪れるこの芸術祭は、アート作品の鑑賞だけでなく、島の豊かな自然、歴史、文化、そしてそこに暮らす人々との交流を通じて、五感を刺激する特別な体験を提供してくれます。

2025年も、いよいよ瀬戸内国際芸術祭が開催されます。数ある会場の中でも、特に「現代アートの聖地」として知られる直島と、自然とアートが調和する豊島は、芸術祭を語る上で欠かせない存在です。この記事では、瀬戸内国際芸術祭2025の概要に触れつつ、直島と豊島の見どころを深掘りし、さらに島々を効率よく巡るためのフェリー島旅の計画術を詳しくご紹介します。初めて訪れる方も、リピーターの方も、この記事を参考に、忘れられない瀬戸内のアート旅を計画してみてください。

瀬戸内国際芸術祭2025とは?「海の復権」を目指すアートの祭典

瀬戸内国際芸術祭は、「海の復権」をテーマに、過疎化が進む島々に活気を取り戻すことを目指して2010年に始まりました。美しい自然と、そこに根付く人々の営みが織りなす瀬戸内の風景の中に、国内外のアーティストによる現代アート作品が展示されます。作品は美術館だけでなく、集落の空き家や屋外、自然の中に溶け込むように設置されており、島全体が美術館となるようなユニークな体験ができます。

2025年の芸術祭は、春・夏・秋の3つの会期に分かれて開催されます。

  • 春会期: 2025年4月18日(金)~5月25日(日)[38日間]
  • 夏会期: 2025年8月1日(金)~8月31日(日)[31日間]
  • 秋会期: 2025年10月3日(金)~11月9日(日)[38日間]

合計107日間にわたり、瀬戸内の島々と沿岸部、過去最多となる全17エリアで開催されます。直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港エリア、宇野港エリアは全会期で会場となります。さらに、春会期は瀬戸大橋エリア、夏会期は志度・津田エリア、引田エリア、秋会期は本島、高見島、粟島、伊吹島、宇多津エリアが加わります。

2025年の芸術祭には、37の国と地域から216組のアーティストが参加し、109の新作を含む254の作品が展開される予定です。また、会期中には20件のイベントも開催されます。

芸術祭の大きな特徴は、島々への移動手段としてフェリーや高速船を利用することです。船上から眺める瀬戸内の多島美も、芸術祭の重要な一部と言えるでしょう。アート作品を巡るだけでなく、船旅そのものや、島での食事、地元の人々との触れ合いなど、瀬戸内の魅力を丸ごと体験できるのが瀬戸内国際芸術祭の醍醐味です。

「現代アートの聖地」直島:安藤建築とアートの融合

香川県の北、岡山県の南に位置する直島は、面積約8平方キロメートル、人口約2,900人の島です。古くから製錬所のある町として発展してきましたが、近年は「ベネッセアートサイト直島」を中心としたアート活動により、「現代アートの聖地」として世界中から注目を集めています。

直島の見どころは、世界的建築家・安藤忠雄氏が手掛けた建築とアート作品が一体となった美術館群、集落に溶け込むように点在する「家プロジェクト」、そして島の風景に彩りを添える屋外作品です。

直島の主要アート施設

  • 地中美術館: 安藤忠雄氏設計。クロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの作品を恒久展示するために建設されました。建物の大半が地下に埋設されており、自然光が作品や空間の表情を刻々と変化させます。作品鑑賞パスポートをお持ちの場合も別途鑑賞料が必要です。事前予約が推奨されています。
  • ベネッセハウスミュージアム: 安藤忠雄氏設計。美術館とホテルが一体となった施設で、1992年に開館しました。展示作品は、活動初期から収集された欧米作家のコレクションが中心です。宿泊者はいつでも鑑賞可能。作品鑑賞パスポート対象外ですが、ヴァレーギャラリーとの共通券があります。
  • 李禹煥美術館: 安藤忠雄氏設計。国際的に活躍するアーティスト、李禹煥(リ・ウファン)氏と安藤忠雄氏のコラボレーションによる美術館です。李氏の作品と建築空間が呼応し合います。
  • ANDO MUSEUM: 安藤忠雄氏設計。本村地区にある築約100年の古民家を改修したミュージアム。安藤忠雄氏の直島での活動や建築思想を紹介しています。
  • 直島新美術館: 2025年5月31日開館。安藤忠雄氏設計で、日本を含むアジア地域の現代アートを中心に展示します。カフェも併設され、瀬戸内海を臨むテラスからの眺めも魅力です。

家プロジェクト

本村地区にある古い民家などを改修し、アーティストが空間そのものを作品化したプロジェクトです。集落の景観に溶け込みながら、内部には驚きのアート空間が広がります。特にジェームズ・タレル氏の《南寺》は、光の体験ができる人気の作品です。家プロジェクトを巡る際は、「本村ラウンジ&アーカイブ」でチケットを購入し、《南寺》の整理券を受け取るのがおすすめです。

屋外作品

直島の海岸線や港周辺には、島の風景と一体となった屋外作品が点在しています。宮浦港のランドマークである草間彌生氏の《赤いかぼちゃ》や、藤本壮介氏の《直島パヴィリオン》は必見です。また、ベネッセハウス周辺には、かつて台風で損傷したものの、新たな形で再設置された草間彌生氏の《南瓜》などがあります。

直島 宮浦港 赤いかぼちゃ
画像引用元: vymaps.com

直島銭湯「I♥湯」

アーティスト大竹伸朗氏が手掛けた、実際に入浴できるアート施設です。外観から内部まで、強烈な個性を放つコラージュやオブジェで埋め尽くされており、日常の銭湯体験がアート体験へと昇華されます。作品鑑賞パスポート対象外ですが、ぜひ立ち寄ってアートに浸りながら汗を流してみてください。

直島は島内にバスやレンタサイクル、レンタカーなどがありますが、アート施設が点在しているため、移動手段の計画が重要です。特にベネッセアートサイト内の施設間は専用シャトルバスが運行しています。

自然とアートが響き合う島、豊島の見どころ

直島の東に位置する豊島は、豊かな湧き水と棚田に象徴される自然美が魅力の島です。近年はアートの島としても注目され、自然景観と調和したアート作品や施設が点在しています。

豊島の主要アート施設

  • 豊島美術館: 建築家・西沢立衛氏とアーティスト・内藤礼氏による美術館。瀬戸内海を望む丘の中腹にあり、周囲の棚田と一体となった美しい景観の中に、水滴のようなユニークな形の建物が佇みます。内部では、一日を通して「泉」が誕生する作品《母型》が展開され、自然光や風、鳥の声が空間に響き渡ります。作品鑑賞パスポートをお持ちの場合も別途鑑賞料が必要です。事前予約が推奨されています。

豊島美術館 外観
画像引用元: hash-casa.com

  • 心臓音のアーカイブ: クリスチャン・ボルタンスキー氏の作品。世界中の人々の心臓音を収集・公開しており、自分の心臓音を録音することもできます。静寂の中で響く心臓音は、生と死、存在について深く考えさせられます。
  • 豊島横尾館: 美術家・横尾忠則氏と建築家・永山祐子氏による美術館。家浦地区にある古民家を改修しており、横尾氏の絵画や立体作品が展示されています。赤を基調とした空間や、庭に配された作品など、横尾ワールドが展開されています。
  • 島キッチン: 建築家・安部良氏設計。空き家だった古民家を改修した飲食店で、島の食材を使ったメニューを提供しています。島のお母さんたちが厨房に立ち、アート作品としても運営されています。食事だけでなく、休憩スポットとしてもおすすめです。

その他の作品と自然

豊島には他にも、空き家を活用したインスタレーションや、屋外に設置された彫刻作品などが点在しています。唐櫃地区の棚田や、家浦港周辺など、島全体を散策しながらアートを探す楽しみがあります。レンタサイクルを利用して島内を巡るのもおすすめです。

瀬戸内アート旅を計画する:フェリー移動と計画術

瀬戸内国際芸術祭の会場となる島々を巡るには、フェリーや高速船が不可欠です。主要な玄関口は香川県の高松港と岡山県の宇野港です。ここから各島への船が出ています。

主要なアクセスルート

  • 高松港から: 直島(宮浦港)、豊島(家浦港、唐櫃港)、女木島、男木島、大島などへのフェリーや高速船が出ています。芸術祭の拠点として最も便利です。
  • 宇野港から: 直島(宮浦港、本村港、風戸港)、豊島(家浦港)、犬島などへのフェリーや高速船が出ています。

直島と豊島の間は、高速旅客船が運航しています(直島宮浦港⇔豊島家浦港)。ただし、この航路には自動車を載せることができません。自家用車で島を巡りたい場合は、宇野港から直島へ車ごとフェリーで渡り、豊島ではレンタカーなどを利用する必要があります。

島内の移動手段

島内の移動手段は、島によって異なりますが、主に以下の方法があります。

  • バス: 直島や豊島など、比較的大きな島では路線バスや芸術祭期間中のシャトルバスが運行しています。主要なアート施設や集落を結んでおり、便利です。
  • レンタサイクル・レンタルバイク: 島の自然を感じながら自由に移動したい方におすすめです。坂道が多い島もあるため、電動アシスト付き自転車が人気です。
  • レンタカー: 効率よく広範囲を巡りたい場合に便利ですが、台数に限りがある場合や、島によっては乗り入れが制限されている場合もあります。
  • 徒歩: 集落内や、作品が密集しているエリアでは徒歩での散策も楽しめます。

お得なチケット・パスポート

芸術祭の作品鑑賞には、「作品鑑賞パスポート」がお得で便利です。会期中、芸術祭の参加作品(施設)のほとんどを各1回鑑賞できます(一部、別途鑑賞料が必要な作品や美術館があります)。オールシーズンパスポートと1シーズンパスポート(夏会期用、秋会期用)があります。購入は、島へ行く前に高松港や宇野港などの本土側案内所で行うのがスムーズです。

また、島間の移動には、対象航路が3日間乗り放題となる「3日間乗り放題デジタル乗船券」など、お得な交通企画チケットも用意されています。公式アプリから購入できるデジタル乗船券は、切符購入の手間が省けて便利です。

モデルコース例:直島・豊島を巡る1泊2日プラン

初めて直島と豊島を訪れる方向けに、高松港を起点とした1泊2日のモデルコース例をご紹介します。

1日目:直島を満喫

  • 午前:高松港からフェリーで直島宮浦港へ。到着後、宮浦港周辺の屋外作品(《赤いかぼちゃ》、《直島パヴィリオン》など)を鑑賞。
  • 昼:宮浦エリアでランチ。
  • 午後:島内バスやレンタサイクルで移動し、ベネッセアートサイト直島へ。《地中美術館》、《ベネッセハウスミュージアム》、《李禹煥美術館》などを巡る(地中美術館は事前予約推奨)。
  • 夕方:本村地区へ移動し、「家プロジェクト」を散策・鑑賞(《南寺》は整理券が必要な場合あり)。
  • 夜:直島泊。夕食は本村地区や宮浦地区の飲食店で。

2日目:豊島と宇野港エリア

  • 午前:直島宮浦港から高速旅客船で豊島家浦港へ。豊島到着後、レンタサイクルやバスで移動し、《豊島美術館》へ(事前予約推奨)。
  • 昼:豊島美術館周辺または島キッチンでランチ。
  • 午後:《心臓音のアーカイブ》、《豊島横尾館》など、豊島のアート作品を巡る。
  • 夕方:豊島家浦港から高速旅客船で宇野港へ。宇野港周辺の屋外作品(《宇野のチヌ》など)やアート施設を散策。
  • 夜:宇野港からJRなどで帰路へ。

このモデルコースはあくまで一例です。芸術祭の公式ウェブサイトやガイドブックには、様々なモデルコースが紹介されていますので、興味のある作品やエリア、滞在日数に合わせてアレンジしてみてください。

混雑対策と事前準備

瀬戸内国際芸術祭の会期中は、特に週末や連休、夏休み期間は大変混雑が予想されます。快適にアート巡りを楽しむために、以下の準備をおすすめします。

  • 公式ウェブサイトや公式アプリの活用: 最新の作品公開スケジュール、開館時間、休館日、混雑予想、イベント情報などを確認できます。公式アプリは経路検索やデジタルパスポート購入にも便利です。
  • チケット・パスポートの事前購入: 作品鑑賞パスポートや、地中美術館、豊島美術館などの予約が必要なチケットは、事前にオンラインで購入しておくとスムーズです。
  • 宿泊・交通手段の予約: 島の宿や、フェリー・高速船の予約(特に車を載せる場合や人気の航路)は早めに行いましょう。
  • ゆとりを持った計画: 1日に多くの島を詰め込みすぎず、1~2島を目安にゆったりと計画するのがおすすめです。船の待ち時間や移動時間も考慮に入れましょう。
  • 島旅の心得: 島の自然や文化を尊重し、ゴミは持ち帰る、私有地に立ち入らないなど、マナーを守って楽しみましょう。

直島・豊島以外の注目エリア(2025年)

2025年の芸術祭では、直島・豊島を含む既存のエリアに加え、新たに4つのエリアが会場となります。これらのエリアにも魅力的な作品や地域資源があります。

  • 瀬戸大橋エリア(春会期): 瀬戸大橋周辺の景観を生かした作品などが展開される可能性があります。
  • 志度・津田エリア(夏会期): さぬき市に位置し、作品制作ワークショップなども行われています。
  • 引田エリア(夏会期): 東かがわ市に位置し、古い町並みや漁港とアートが一体となった風景が期待されます。
  • 宇多津エリア(秋会期): 香川県最小の町で、新旧の文化と景観が織りなすエリアです。

これらの新規エリアや、本島、高見島、粟島、伊吹島といった秋会期のみの会場も、それぞれの島の特色を生かしたアート体験ができるでしょう。時間があれば、直島・豊島と組み合わせて訪れてみるのもおすすめです。

さらに瀬戸内アート旅を楽しむために

  • グルメ: 瀬戸内の島々には、新鮮な海の幸や島の野菜を使った美味しいグルメがたくさんあります。島キッチン(豊島)のようなアートと食が融合した場所や、地元のうどん店、カフェなどを訪れてみましょう。
  • 宿泊: 絶景オーシャンビューのホテルや、古民家を改修した趣のある宿など、様々なタイプの宿泊施設があります。アート体験の余韻に浸りながら、島の夜を過ごすのも良いでしょう。
  • デジタルスタンプラリー: 「くるりアートかがわ」など、芸術祭と連携したデジタルスタンプラリーも開催されています。アート巡りをしながらスタンプを集める楽しみもあります。
  • ボランティア: 芸術祭を支えるボランティア「こえび隊」に参加するという関わり方もあります。作品制作の手伝いや、来場者の案内など、芸術祭を内側から体験できます。

瀬戸内海の多島美
画像引用元: matcha-jp.com

まとめ

瀬戸内国際芸術祭2025は、アート、自然、歴史、文化、そして人々との出会いが織りなす、唯一無二の体験ができる国際的なイベントです。特に直島と豊島は、安藤建築と現代アートの傑作が集まる必訪の島であり、瀬戸内アート旅のハイライトとなるでしょう。

フェリーでの島巡りは、瀬戸内の美しい景色を堪能できるだけでなく、島と島を結ぶ移動そのものが旅の魅力となります。作品鑑賞パスポートやお得な乗船券を活用し、公式アプリやウェブサイトで最新情報をチェックしながら、ゆとりを持った計画を立てることが、瀬戸内アート旅を最大限に楽しむ鍵です。

2025年の夏会期、秋会期に向けて、さらに多くの作品が公開され、イベントが開催されます。この記事を参考に、あなただけの特別な瀬戸内アート旅を計画し、心に残る体験をしてください。瀬戸内の島々が、アートと共にあなたを待っています。