
埼玉県の中央に位置し、政令指定都市でもあるさいたま市。都心からのアクセスも良く、大宮、浦和、さいたま新都心など、それぞれに個性豊かなエリアが集まる活気あふれる街です。
そんなさいたま市は、実は隠れたグルメの宝庫。長い歴史の中で育まれた伝統の味から、地域おこしから生まれたユニークなB級グルメまで、多種多様な「ご当地の味」が息づいています。
今回は、さいたま市民が愛してやまない、そして市外から訪れるならぜひ一度は味わってほしい、さいたま市及びその周辺の「絶対食べたいご当地グルメ」を厳選してご紹介します。さあ、あなたも未知なる埼玉グルメの世界へ足を踏み入れてみませんか?
さいたま市を代表する伝統の味
浦和のうなぎ
さいたま市のご当地グルメとして、まず外せないのが「浦和のうなぎ」です。
江戸時代、浦和周辺は沼地が多く、川魚が豊富に生息する水郷地帯でした。中山道を行き交う旅人たちは、この地で獲れる新鮮なうなぎを蒲焼にして振る舞われ、その美味しさが評判を呼びました。これが「浦和のうなぎ」の始まりと言われています。
大正時代以降、都市開発によって地元のうなぎは獲れなくなってしまいましたが、当時の伝統と技術は今も老舗のうなぎ店にしっかりと受け継がれています。ふっくらと蒸し上げ、香ばしく焼き上げた蒲焼は、まさに至福の味わい。高級なイメージがあるうなぎですが、特別な日だけでなく、少し贅沢したいランチやディナーにもおすすめです。
浦和駅前には、やなせたかしさんデザインの浦和区マスコットキャラクター「うなこちゃん」の像があり、街のシンボルとして親しまれています。また、毎年5月には「さいたま市浦和うなぎまつり」が開催され、多くの人で賑わいます。歴史と文化を感じながら味わう浦和のうなぎは、格別の美味しさです。

個性豊かな麺グルメ
さいたま市には、地域に根ざした個性的な麺料理が豊富にあります。ラーメンから焼きそば、うどんまで、バラエティ豊かなラインナップをご紹介しましょう。
岩槻豆腐ラーメン
さいたま市岩槻区(旧岩槻市)で生まれた「岩槻豆腐ラーメン」は、地元で長年愛されているソウルフードです。
醤油ベースのあっさりとしたスープに、豆腐と挽肉のあんかけがたっぷりとかかっているのが特徴。麻婆ラーメンと似ているようで異なります。麻婆豆腐のような強い辛味や痺れはなく、どちらかといえば優しい、さっぱりとした味わいです。各店舗ごとにあんかけの味付けや具材に工夫が凝らされており、食べ比べも楽しいグルメです。
2008年の「第2回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」で優勝したことで、その名が広く知られるようになりました。岩槻を訪れた際には、ぜひ一度味わってみてください。
スタミナラーメン
さいたま市の大宮から浦和にかけてのエリアで親しまれているのが、通称「スタミナ」と呼ばれる「スタミナラーメン」です。
醤油味のスープに、ニラ、挽肉、豆板醤などを加えたピリ辛の餡かけが麺の上にのっています。とろみのある餡が麺によく絡み、一口食べれば体がポカポカしてくるようなパンチのある味わいです。香辛料が効いているため、夏はもちろん、寒い冬に食べても汗が噴き出すという人もいるほど。
厳密なチェーン店ではありませんが、「娘々(にゃんにゃん)」や「漫々亭(まんまんてい)」といった系列店を中心に提供されており、それぞれのお店で少しずつ味が異なります。学生やサラリーマンを中心に、日常的に食べられる手軽な価格と中毒性のある美味しさで、根強い人気を誇っています。
大宮ナポリタン
鉄道の街として栄えた大宮には、昔ながらの喫茶店や洋食店が多く、そこで提供されるナポリタンが鉄道マンをはじめとする地元の人々に親しまれてきました。その懐かしい味を復活させ、地域おこしに繋げようと生まれたのが「大宮ナポリタン」です。
「大宮ナポリタン」を名乗るには、いくつかの定義があります。一つは、旧大宮市内に店舗があること。そしてもう一つは、埼玉県産の野菜を1種類以上使用することです。この定義を満たした加盟店は40店以上あり、それぞれの店舗が独自の工夫を凝らした個性豊かなナポリタンを提供しています。
もちもちの太麺にたっぷりのケチャップ、そして彩り豊かな埼玉県産野菜。どかんと盛られたボリューム満点の一皿は、見た目にも食欲をそそります。昔ながらの喫茶店風の味わいから、創作系まで様々なので、あなた好みの「大宮ナポリタン」を探してみてはいかがでしょうか。公式マップやSNSも公開されているので、ナポリタン巡りの参考にしてみてください。

知る人ぞ知る!ユニークグルメ
さいたま市には、まだあまり知られていないけれど、地元では愛されているユニークなグルメも存在します。
岩槻ねぎの塩焼きそば
岩槻区は、江戸時代から続く伝統野菜「岩槻ねぎ」の産地です。甘くて柔らかいのが特徴の岩槻ねぎを主役にしたB級グルメが、「岩槻ねぎの塩焼きそば」です。
普段は脇役になりがちなねぎが、ここでは堂々と主役を張ります。塩味の焼きそばの上に、甘みのある岩槻ねぎがゴロッと乗せられており、ねぎ本来の美味しさを存分に楽しめます。岩槻ねぎの収穫シーズンである11月頃から4月頃までの限定メニューとして提供されることが多く、レア感のあるグルメと言えるでしょう。甘いねぎと塩味の焼きそばの組み合わせは、一度食べたら忘れられない味わいです。
うらわぐりる
うなぎの街・浦和にちなんだ新ご当地グルメが「うらわぐりる」です。さいたま市南区、特に南浦和駅周辺の飲食店で提供されています。
うなぎのタレをベースにした特製ソースを使用し、白ネギと黒こしょうをアクセントにした肉料理または魚料理であることが条件です。網や鉄板で軽く焦げ目がつく程度に焼くことから「ぐりる」と名付けられました。提供店舗は夜営業の居酒屋さんが多く、お酒と一緒に楽しむスパイシーでレトロモダンな料理として開発されました。うなぎのタレの奥深い旨味とスパイシーさが融合した、新しい浦和の味です。
さいたま市周辺の注目グルメ
さいたま市の周辺地域にも、魅力的なご当地グルメがたくさんあります。足を延ばして、埼玉県の多様な食文化に触れてみるのもおすすめです。
北本トマトカレー
北本市の名産であるトマトをふんだんに使用した「北本トマトカレー」は、2011年の「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」でグランプリに輝いた実力派グルメです。
「ライスをトマトで赤くすること」「ルーにトマトを使用すること」「トッピングにトマトを使用すること」という3つの条件を満たすことが定義。まさにトマトづくしのカレーです。トマトの旨味と酸味のバランスが絶妙で、トマト嫌いな人でも美味しく食べられると評判です。市内には認定店が複数あり、それぞれのお店で個性的な北本トマトカレーを提供しています。
こうのす川幅うどん
鴻巣市を流れる荒川の川幅が日本一広いことにちなんで誕生したのが「こうのす川幅うどん」です。
きしめんの倍以上もある、幅広の平打ち麺が最大の特徴。見た目のインパクトはもちろん、もちもち、つるつる、ぷるぷるとした独特の食感が楽しめます。つけ汁やかけうどんなど、様々なスタイルで提供されており、最近ではうどん以外の「川幅グルメ」も登場しています。一度見たら忘れられない、ユーモアあふれるご当地グルメです。
行田フライ・ゼリーフライ
足袋の街として知られる行田市には、「フライ」と「ゼリーフライ」という二つのユニークなB級グルメがあります。
「フライ」は、水で溶いた小麦粉を鉄板で薄く焼き、ネギや肉、卵などを加えたもの。お好み焼きに似ていますが、より薄くクレープのような軽い食感が特徴です。名前の由来は諸説ありますが、フライパンで焼いたから、という説が有力です。
一方、「ゼリーフライ」は、おからとじゃがいもをベースに、ニンジンやネギなどを混ぜて小判型に成形し、衣をつけずに揚げたもの。名前の由来は、小判のような形から「銭フライ」と呼ばれていたのが訛ったという説が有力です。揚げた後に甘めのソースにくぐらせて仕上げます。どちらも素朴で懐かしい味わいで、行田市民のおやつとして親しまれています。行田を訪れたら、ぜひ両方食べ比べてみてください。

秩父のわらじカツ丼、豚みそ丼、みそポテト
さいたま市からは少し離れますが、埼玉県を代表するグルメとして秩父地方のグルメもご紹介します。
「わらじカツ丼」は、その名の通り、わらじのように大きな薄めのカツが2枚ご飯に乗ったインパクト抜群の丼。甘辛いタレがカツによく絡み、見た目ほどの重たさはなくペロリと食べられます。
「豚みそ丼」は、味噌に漬け込んだ豚肉を炭火で香ばしく焼き上げた丼。味噌の風味と豚肉の旨味がご飯と相性抜群です。お店ごとに味噌ダレの味やトッピングが異なります。
「みそポテト」は、ふかしたじゃがいもを天ぷらにし、甘めの味噌ダレをかけたもの。農作業の合間の「小昼飯(こぢゅうはん)」として親しまれてきた素朴な味わいで、おやつやおつまみにぴったりです。
これらの秩父グルメは、さいたま市内でも提供しているお店があるほか、大宮駅構内の「全国ご当地グルメコート大宮横丁」などでも味わえる場合があります。秩父まで行けないけれど食べてみたい、という方は探してみてください。
まとめ
さいたま市及びその周辺地域には、歴史や地域性が生んだ多様なご当地グルメが数多く存在します。浦和のうなぎに代表される伝統の味から、岩槻豆腐ラーメンや大宮ナポリタンのような個性的な麺料理、そして行田のフライ・ゼリーフライのようなユニークなB級グルメまで、その魅力は尽きません。
今回ご紹介したグルメはほんの一部ですが、どれも地元の人々に愛され続けている自慢の味ばかりです。都心からのアクセスも良いさいたま市は、日帰りでのグルメ旅にも最適です。
次にさいたま市を訪れる際は、ぜひこれらのご当地グルメを味わってみてください。きっと、新しい埼玉の魅力に出会えるはずです。あなただけのお気に入りの一品を見つけて、美味しい旅を楽しんでくださいね!