公開日: 2025年5月26日

ワーケーションの行方:日本での普及と企業・地方の期待と課題

ワーケーションの行方:日本での普及と企業・地方の期待と課題

近年、「ワーケーション」という言葉を耳にする機会が増えました。働き方改革やテレワークの普及を背景に、新しいワークスタイルとして注目されています。しかし、その実態や日本での普及状況、そして企業や地域が抱える期待と課題については、まだ十分に理解されていない部分も多いのではないでしょうか。

本記事では、ワーケーションとは何かという基本的な定義から、日本における現状、企業や地方自治体の取り組み、そして今後の普及に向けた課題と展望について、詳しく掘り下げていきます。

ワーケーションとは何か?なぜ今注目されるのか

「ワーケーション(Workation)」とは、「ワーク(Work)」と「バケーション(Vacation)」を組み合わせた造語です。普段のオフィスや自宅といった場所を離れ、観光地やリゾート地などで仕事をしながら、その土地ならではの休暇やアクティビティも楽しむ新しい働き方・過ごし方を指します。

テレワークやブレジャーとの違い

ワーケーションと混同されやすい言葉に「テレワーク」や「ブレジャー」があります。

  • テレワーク:会社のオフィス以外の場所(自宅やコワーキングスペースなど)で働くこと全般を指します。休暇の要素は含みません。
  • ブレジャー(Bleisure):「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure)」を組み合わせた造語です。出張などのビジネス目的の旅行に、前泊や延泊をして個人的な休暇(レジャー)を組み合わせるスタイルです。業務時間中は出張として扱われ、前後の休暇部分は有給休暇扱いとなります。
  • ワーケーション:テレワークと同様にオフィス以外の場所で働きますが、明確に「休暇」の要素を含んでいる点がテレワークと異なります。また、ブレジャーが出張というビジネス目的が主体であるのに対し、ワーケーションは働く場所の自由度を高め、休暇と仕事を両立させることに主眼が置かれます。ワーケーション中の仕事時間は勤務時間として扱われるのが一般的です。

注目される背景

ワーケーションが注目される背景には、いくつかの要因があります。

  1. 働き方改革の推進:政府主導で多様な働き方が推奨される中で、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方の一つとして位置づけられています。
  2. テレワークの普及:新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの企業でテレワークが急速に浸透しました。これにより、オフィス以外の場所で働くことへの抵抗感が薄れ、ワーケーションの土台が整備されました。
  3. コロナ禍における観光業の打撃:観光地やリゾート地がコロナ禍で大きな影響を受けたことから、新たな旅行需要の創出や旅行需要の平準化策として、ワーケーションが期待されています。
  4. 地域活性化への貢献:都市部からのワーケーション滞在者が増えることで、地域の消費拡大や関係人口の増加、ひいては移住・定住へのきっかけとなることが期待されています。
  5. 従業員のウェルビーイング向上:非日常的な環境で働くことでリフレッシュ効果が得られ、心身の健康維持やモチベーション、創造性の向上につながると考えられています。

政府もワーケーションを推進しており、国土交通省、環境省、総務省、内閣府などが連携して、企業や自治体向けの支援策や情報提供を行っています。

日本におけるワーケーションの現状と普及率

ワーケーションという言葉自体の認知度は、企業、従業員ともに高まっています。国土交通省観光庁の調査(2022年3月時点)によると、従業員の認知度は80.4%に達しています。しかし、実際にワーケーションを導入している企業は5.3%、体験したことのある従業員は4.2%に留まっており、認知と実践の間には大きなギャップがあるのが現状です。

普及が進まない背景にある課題

なぜ、これほど注目されながらも、ワーケーションの実践は限定的なのでしょうか。そこにはいくつかの課題が存在します。

  • 企業の理解不足・導入のハードル:ワーケーションの導入メリットや具体的な運用方法、労務管理、セキュリティ対策などに対する企業の理解が十分に進んでいません。制度設計や環境整備にコストや手間がかかることも導入をためらう要因となっています。
  • 従業員の関心の低さ・誤解:「休暇中にまで仕事をしたくない」「公私の区別が曖昧になる」といったネガティブなイメージや、「ワーケーションは一部の職種や社員にしかできない」といった誤解があります。また、費用負担や家族同伴のルールなども不明確な場合、利用を躊躇する原因となります。
  • 日本社会特有の「ヒガミ根性」:出張ですら「遊びに行っている」と見なされがちな日本の企業文化において、ワーケーションはさらに「遊んでいる」と捉えられかねないという懸念があります。このような同調圧力や周囲の目が、ワーケーションの利用を妨げる要因の一つとなっている可能性が指摘されています。
  • 受け入れ側の体制整備の遅れ:ワーケーション滞在者が快適に仕事と休暇を両立できるような、高速インターネット環境、ワークスペース、宿泊施設、地域との交流プログラムなどの受け入れ体制が、すべての地域で十分に整っているわけではありません。

これらの課題が複合的に絡み合い、ワーケーションの本格的な普及を阻んでいると考えられます。

ワーケーションの種類とそれぞれの特徴

一口にワーケーションと言っても、その目的やスタイルによっていくつかのタイプに分類できます。企業がワーケーションを導入する際には、自社の目的や文化に合ったタイプを選択することが重要です。

  1. 休暇活用型:リゾート地や観光地で、休暇を楽しみながら業務も行うスタイルです。比較的短期間(数日~1週間程度)の滞在が多く、主に個人のリフレッシュやワークライフバランスの向上を目的とします。業務時間は勤務扱いとなります。
  2. 地域課題解決型:企業や従業員が特定の地域を訪れ、その地域が抱える課題(人口減少、産業衰退、環境問題など)について地域住民や関係者と共に考え、解決策を提案したり、実際の活動に参加したりするスタイルです。人材育成、SDGsへの貢献、新規事業創出などを目的とすることが多く、滞在期間は比較的長期(1週間~1ヶ月、あるいは複数回訪問)に及ぶこともあります。地域との交流や課題解決に向けた活動が主な業務内容となります。
  3. 合宿型:チームや部署、あるいは企業全体で、通常のオフィスから離れた場所(研修施設、温泉地、リゾートホテルなど)に集まり、集中的に会議や研修、チームビルディングなどを行うスタイルです。非日常的な環境での共同作業を通じて、チーム力の強化や創造性の向上を目指します。期間は日帰りから数日、あるいは1ヶ月程度の長期にわたる場合もあります。
  4. サテライトオフィス型:企業が地方などに設置したサテライトオフィスや、提携しているコワーキングスペースなどを利用して業務を行うスタイルです。長期滞在(1ヶ月~半年程度)を前提とすることが多く、地方での暮らしを体験しながら働くことができます。地方在住の人材採用や、都市部からの分散勤務、お試し移住などを目的とします。

これらのタイプは単独で実施されるだけでなく、組み合わせて運用されることもあります。例えば、休暇活用型で地域を訪れた従業員が、地域のイベントに参加したり、簡単な地域課題解決プログラムに関わったりするといったケースです。

企業がワーケーションに期待するメリットと成功事例

ワーケーションは、適切に導入・運用することで、企業にとって様々なメリットをもたらす可能性があります。

企業側のメリット

  • 従業員のモチベーション・パフォーマンス向上:非日常的な環境での仕事は気分転換になり、リフレッシュ効果によって集中力や創造性が高まることが期待できます。業務後の楽しみがあることで、仕事への意欲も向上するでしょう。
  • 有給休暇取得率の向上:ワーケーションは、仕事と休暇を組み合わせることで、長期休暇を取得しやすくする効果があります。「休むと仕事が溜まる」「周囲に迷惑がかかる」といった懸念を軽減し、有給休暇の取得を促進します。
  • 採用力強化・多様な人材確保:働く場所や時間の自由度が高いワーケーションを導入していることは、多様な働き方を求める求職者にとって大きな魅力となります。地方在住の優秀な人材を採用できる可能性も広がります。
  • 企業文化の醸成・エンゲージメント向上:柔軟な働き方を認めることで、従業員は企業から信頼されていると感じ、会社への愛着や貢献意欲が高まります。また、合宿型や地域課題解決型ワーケーションは、チームビルディングや社内コミュニケーションの活性化にもつながります。
  • 生産性向上:モチベーションや集中力の向上、ストレス軽減、チームワーク強化といった要素が複合的に作用し、結果として組織全体の生産性向上に貢献することが期待されます。
  • 新規事業・イノベーション創出:普段とは異なる環境や地域の人々との交流から、新しいアイデアや視点が生まれやすくなります。地域課題解決型ワーケーションは、地域資源を活用した新規事業開発のきっかけとなる可能性も秘めています。

具体的な企業事例

多くの企業が様々な目的でワーケーションを導入し、成果を上げています。

  • 日本航空株式会社(JAL):2017年からワーケーション制度を導入。有給休暇取得率の向上や、長期休暇後の業務遂行への不安軽減を目指しました。体験ツアーや役員による率先利用、合宿型ワーケーションなどを通じて制度を浸透させ、利用者が増加。実証実験では、ワーケーション期間中の仕事パフォーマンス向上やストレス低減効果が確認されています。農業をテーマにした地域課題解決型の「アグリワーケーション」も実施しています。
  • ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社:働く場所と時間を自由に選べる「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」制度を2016年に導入。その派生として、提携自治体の施設を無料で利用できる「地域deWAA」を展開。従業員の幸福度(ウェルビーイング)や生産性向上に効果を実感しています。
  • 株式会社野村総合研究所(NRI):徳島県三好市にサテライトオフィスを設置し、年に数回、1ヶ月間の中期滞在型ワーケーション「三好キャンプ」を実施。地域課題解決型ワーケーションとして、地方の課題や価値を見出す機会を提供し、参加者の視野の広がりや仕事への考え方の変化を促しています。
  • 株式会社JTB:ハワイのホノルル支店にワーケーションスペースを設置し、「ワーケーション・ハワイ制度」を導入。出張や休暇でハワイを訪れた従業員が利用でき、開放的な環境での仕事によるストレス解消やアイデア力向上といった声が寄せられています。
  • ランサーズ株式会社:もともと働く場所に制限がない環境でしたが、地域でのワーケーションを推奨する「社員さすらいワーク制度」を導入。提携地域での業務や地域住民との交流を通じて、社員のスキルアップやユーザー理解、サービス向上につなげています。
  • 株式会社LIFULL:宿泊機能付きコワーキング施設「Living Anywhere Commons」を全国に展開し、従業員が場所に縛られない働き方・暮らし方を実践。多様な人との交流による新しい発見や視野の広がり、採用力強化につながっています。
  • 株式会社内田洋行:宮城県丸森町で地域創生と連携した「丸森ヘルスケアワーケーション」を実施。森林療法を取り入れながらチームビルディングを行い、地域貢献、社員間のコミュニケーション活性化、チームパフォーマンス向上といった効果を得ています。
  • サイボウズ株式会社:柔軟な労働環境実現のため、勤務時間帯選択制度に続き、働く場所を自由に選べる仕組みを導入。採用の幅が広がり、中途採用強化につながっています。

これらの事例から、ワーケーションは単なる休暇中の仕事ではなく、企業の経営課題解決や組織力強化に資する戦略的な取り組みとして活用されていることがわかります。

Successful workation example
画像引用元: workationjapan.jp

地方・自治体がワーケーションに期待するメリットと取り組み

ワーケーションは、受け入れる地方や自治体にとっても、地域活性化の重要な手段として期待されています。

地域側のメリット

  • 観光振興・地域経済の活性化:ワーケーション滞在者は、通常の観光客よりも滞在期間が長くなる傾向があり、宿泊費や飲食費、アクティビティ費用など、地域での消費拡大に貢献します。また、閑散期にも需要が見込めるため、旅行需要の平準化にもつながります。
  • 関係人口の増加・移住促進:ワーケーションを通じて地域を深く知ることで、その地域に愛着を持つ「関係人口」が増加します。これが、将来的な二地域居住や移住・定住へのきっかけとなる可能性が高まります。
  • 地域課題解決への貢献:地域課題解決型ワーケーションを受け入れることで、都市部の企業や個人が持つ専門知識やスキル、新しい視点を地域に取り込むことができます。これにより、地域が抱える様々な課題の解決に向けたリソースを獲得できます。
  • 域外企業との関係構築・企業誘致:ワーケーションをきっかけに、地域と都市部の企業との間に新たなビジネス連携や協業が生まれる可能性があります。サテライトオフィスの誘致や、地域での事業展開につながることも期待されます。
  • 地域住民の意識向上:外部からの訪問者との交流を通じて、地域住民が自分たちの地域の魅力や課題を再認識し、地域活性化への意識を高めるきっかけとなります。

具体的な自治体の取り組み事例

多くの自治体がワーケーション誘致に積極的に取り組んでいます。

  • 和歌山県:ワーケーション誘致の先駆けとして知られ、2017年から「和歌山県ワーケーションプロジェクト」を展開。サテライトオフィス誘致にも力を入れており、白浜町などはICT企業のサテライトオフィス集積地となっています。ワーケーション自治体協議会の会長を務めるなど、全国的な普及を牽引しています。
  • 長野県:「信州リゾートテレワーク」を展開し、県内各地でワークスペースやWi-Fi環境を備えた宿泊施設などを整備。ドロップイン利用可能な施設や、ワーケーションに必要な資金の一部を支援する制度も設けています。
  • 北海道:「北海道型ワーケーション」として、道内市町村や企業・団体と連携し、多様なニーズに対応したプログラムを展開。複数の自治体をまたいだ長期滞在や、サテライトオフィス活用を推進しています。ポータルサイトでの情報発信やマッチング支援も行っています。
  • 富山県:ワーケーション情報を集約したポータルサイト「めぐるとやま」を運営。「とやまワーケーション推進事業助成金」により、県外からのワーケーション滞在費の一部を補助するなど、積極的な誘致活動を行っています。
  • 埼玉県横瀬町:地域クリエイターが空き家を再生したサウナ付き一棟貸しワーケーション宿「DANDAN」などが誕生しており、新たなワーケーションの場として注目されています。

これらの自治体は、地域の自然や文化、既存の施設などを活用し、ワーケーション滞在者が快適に過ごせる環境整備や、地域との交流機会の創出に力を入れています。

Regional workation initiative
画像引用元: internet.watch.impress.co.jp

政府・省庁の推進・支援策

国もワーケーションの普及・定着に向けて様々な施策を展開しています。

  • 国土交通省観光庁:「観光立国推進基本計画」においてワーケーションを重要な取り組みと位置づけ、普及・定着に向けた支援を推進。企業向けパンフレット作成や、労災・税務処理に関するQ&A提示などを行っています。令和6年度は子育て世代向けモデルやデジタルノマド誘致モデルの実証事業に取り組んでいます。
  • 環境省:国立公園や温泉地などでの滞在型ツアー・ワーケーション推進を支援。自然環境でのワーケーションが、企業のSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)や健康経営にも資するとしています。
  • 総務省:地域サテライトオフィス整備推進事業により、地方公共団体によるサテライトオフィス整備を支援。テレワーク普及展開推進事業として、企業向けの相談窓口も設置しています。
  • 内閣府:地方創生テレワーク交付金により、自治体によるサテライトオフィス整備や利用促進を支援。地方創生テレワーク推進事業として、地方自治体と民間企業のマッチング支援も行っています。

これらの政府・省庁の取り組みは、ワーケーションを単なる個人の働き方としてだけでなく、地域活性化や社会全体の課題解決に資する取り組みとして捉え、多角的に推進しようとする姿勢を示しています。

ワーケーション普及に向けた課題と今後の展望

ワーケーションの普及には、前述した認知と実践のギャップを埋めるための課題克服が不可欠です。企業、従業員、地域それぞれの立場から、主な課題と今後の展望について考えます。

企業側の課題と対応策

  • 労務管理・勤怠管理:働く場所が多様化するため、労働時間の把握や管理が難しくなります。クラウド型勤怠システムの導入や、出退勤時の報告ルールの設定など、管理体制の見直しが必要です。
  • セキュリティ対策:社外のネットワーク環境を利用するため、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まります。VPN構築、セキュリティソフト導入、端末管理ルールの徹底、従業員へのセキュリティ教育などが重要です。
  • 就業規則の改訂:労働時間、休憩時間、費用負担(交通費、宿泊費など)、家族同伴の可否、労災適用範囲などについて、ワーケーションに対応した明確なルールを就業規則に定める必要があります。
  • 人事評価:遠隔での勤務となるため、従来の「オフィスにいる時間」を基準とした評価が難しくなります。成果や目標達成度を重視するなど、公平な評価制度への見直しが求められます。
  • 公平性の確保:職種や業務内容によってはワーケーションが難しい従業員もいます。ワーケーションが可能な従業員とそうでない従業員との間で不公平感が生じないよう、他の柔軟な働き方(テレワーク、時短勤務など)の選択肢を増やしたり、ワーケーション以外の福利厚生を充実させたりするなど、全体として多様な働き方を支援する姿勢を示すことが重要です。

企業は、これらの課題に対して、まずは小規模な実証実験から始め、従業員の意見を聞きながら制度や運用方法を改善していくアプローチが有効です。

従業員側の課題と対応策

  • 公私の区別:仕事と休暇の境界線が曖昧になり、かえって長時間労働になったり、十分にリフレッシュできなかったりする可能性があります。意識的に仕事時間と休暇時間を区切り、メリハリをつけることが重要です。
  • 本業への影響:地域課題解決型など、本業とは異なる活動に参加する場合、本業との両立が課題となることがあります。事前に上司や同僚と十分にコミュニケーションを取り、理解を得ておくことが大切です。
  • 自由度の低さ:地域課題解決型や合宿型など、プログラム内容が予め決められているタイプのワーケーションは、個人の自由な時間や活動が制限される場合があります。自身の目的に合ったワーケーションタイプを選択することが重要です。

従業員は、ワーケーションを単なる「休暇中の仕事」と捉えるのではなく、「場所を変えて豊かに暮らし働く手段」として積極的に活用し、自身のキャリアやウェルビーイング向上につなげる意識を持つことが求められます。

地域側の課題と対応策

  • 受け入れ体制の整備:高速インターネット環境、快適なワークスペース、多様な宿泊施設、地域住民との交流機会など、ワーケーション滞在者が求める環境を整備する必要があります。既存施設の改修や、遊休施設の活用などが考えられます。
  • プログラムの企画・運営:ワーケーション滞在者を惹きつけるためには、地域の魅力を活かしたユニークなプログラム開発が不可欠です。地域の歴史、文化、自然、産業などをテーマにした体験プログラムや、地域住民との交流イベントなどを企画・運営するノウハウが必要です。
  • 地域の協力関係構築:ワーケーション受け入れには、宿泊施設、飲食店、観光施設、地域住民など、様々な関係者の協力が不可欠です。地域全体でワーケーションを歓迎する雰囲気を作り、関係者間の連携を強化する必要があります。
  • 参加者との継続的な関係構築:ワーケーションを単なる一過性の訪問で終わらせず、関係人口や移住につなげるためには、滞在後も地域と関わり続けられるような仕組みづくりが重要です。オンラインコミュニティの活用や、リピーター向けの特典などが考えられます。
  • 効果の可視化:ワーケーション誘致の効果(経済効果、関係人口増加数、地域課題解決への貢献度など)を定量的に把握し、関係者間で共有することで、取り組みの改善や継続的な支援獲得につなげることができます。

自治体は、これらの課題に対し、地域内の関係者だけでなく、外部の専門家や企業とも連携しながら、地域ならではのワーケーションスタイルを確立していくことが求められます。

Workation challenges and solutions
画像引用元: workationjapan.jp

日本社会特有の課題への対応

「ヒガミ根性」といった日本社会特有の課題に対しては、個人の意識改革だけでなく、企業や社会全体の意識改革が必要です。ワーケーションが「サボり」ではなく、生産性向上や創造性発揮につながる「戦略的な働き方」であるという認識を広めるための啓発活動や、成功事例の共有が有効でしょう。また、多様な働き方を認め、互いを尊重する企業文化・社会文化を醸成していくことが、長期的な課題克服につながります。

まとめ:ワーケーションの未来へ

ワーケーションは、単なる流行語ではなく、働き方の多様化、地域活性化、そして個人のウェルビーイング向上といった、現代社会が抱える様々な課題に対する一つの解決策となり得る可能性を秘めています。

現状ではまだ普及の途上にあり、企業、従業員、地域それぞれが課題を抱えていますが、政府の推進や、多くの企業・自治体による試行錯誤、そしてワーケーションを体験した人々のポジティブな声は、今後の普及に向けた明るい兆しを示しています。

ワーケーションが日本社会に定着するためには、制度設計や環境整備といったハード面の課題解決に加え、働くことや休暇に対する意識、そして多様な働き方を受け入れる社会全体のソフト面の変化が不可欠です。

ワーケーションを通じて、私たちは場所や時間にとらわれない自由な働き方を手に入れ、心身ともに豊かになり、そして地域の新たな魅力や可能性を発見することができるでしょう。ワーケーションの本格的な普及は、日本全体の働き方や暮らし方、そして地域社会のあり方を大きく変革する可能性を秘めていると言えます。

この新しい働き方が、多くの人にとって「夢のような働き方」から「当たり前の選択肢」となる未来に向けて、企業、地域、そして私たち一人ひとりが、ワーケーションの可能性を追求し、課題克服に向けて取り組んでいくことが期待されます。

Future of workation in Japan
画像引用元: workationjapan.jp